テントやレインウェアを購入するときに指標になるものはたくさんありますが、その中の1つに防水性能があります。
防水性能を比較するためのしっかりとした指標にするには防水性能の内容を理解している必要があります。一般的に「防水」と言われるものの中には、撥水と防水という2つのキーワードがあり、市場では同じ意味で表現されることがあるのにも関わらず、その2つは似て非なるものだからです。
商品がどのような加工がしてあるかは、メーカーが公表している場合がほとんどです。
自信がある場合は、積極的に公表するので素材や加工が公表されているかどうかも比較の重大な材料になります。
例として、ハバハバシールドのフライシートの素材表示を見てみましょう。
20D リップストップナイロン 耐水圧1,200mm エクストリームシールドポリウレタン& シリコンコーティング
これは次のような意味があります。
[生地の厚さ] [生地の種類・素材] [防水加工] [撥水加工]
つまりハバハバシールドは、防水と撥水どちらも使われている事になります。
自分が購入しようとしている商品の防水性能は、防水加工によるものなのか、それとも撥水加工によるものなのか、もしくはハイブリッドなのか。
それぞれの違い、メリット、デメリットをしっかり理解して比較の指標にしましょう!
目次
Toggle撥水は防水ではない!
防水と撥水はよく混同されていますが2つは同じことを表す言葉ではありません。
たまに”高い防水性!”と書かれているのに、よく見ると撥水加工しかされていないということがあります。また防水スプレーとして販売されているものの多くは、撥水スプレーだったります。
水の侵入を防ぐという意味では似ていますが、実際は似て非なるものです。
防水とは、防水以外の意味はありませんので気をつける必要があります。
ただし、防水と撥水はセットで使用することで最高の防水性能を発揮することができるのでどちらも重要であることに違いはありません。
防水とは
まずは防水です。
防水の仕組みは、生地にコーティングを施し、外と内で隔たりを作る事で水が入ってこないようにすることです。
この場合は、生地に水が染み込んでも防水コーティングが最終防衛ラインとなり内側へミスが染み出すことを”恒久的”に防いでくれます。
ひとえに防水といっても、性能の差もあります。
その防水性能は耐水圧で表現されます。
耐水圧
生地の防水性能は耐水圧mmH2Oで表され、生地やポリウレタンコーティングの厚さではなく、生地を水が通過できる圧力で評価をしています。標準的な防水試験では、生地に水圧をかけ、3滴の水滴が布地を通り抜ける圧力がどこかを計測します。
例えば、耐水圧1200mmH2Oという数値は、布地の上に1200mmの水をかけても水漏れしないことを意味します。この測定値は、psiに換算することができ、耐水圧1,200mmH2Oは約1.7psiです。
例えば、ハバハバシールドのフライシートは耐水圧1,200mmですので、フライシートに1.7psiの圧力で水が当たれば染み込んでくる可能性があります。
メリット
- 効果は恒久的
- 防水効果が高い
- メンテナンスフリー
デメリット
- 透湿性が低い
- 結露しやすい
このデメリットをカバーする、透湿性をを持ったメンブレン(膜)を使用した防水加工もあります。
撥水とは
撥水とは、水が生地にあたった時に、吸収される事無く水玉になって弾かれる状態です。イメージとしては磁石の同じ極同士をくっつけようと思ってもくっつかない状態のようなことが起こっていると思ってください。
この効果で汚れもつきにくくなります。
撥水加工とは、生地の表面に撥水剤を噴霧して生地に撥水性を付加させる加工で、比較的“手軽”に施工することができます。
撥水加工は、防水加工とちがい一時的な処理となり使用すると効果が減衰していきます。
メリット
- 安価に施工できる(市販品も豊富)
- 通気性を邪魔しない
- 汚れも防げる
デメリット
- 効果は一時的で使用とともに減衰するので定期的にメンテナンスする必要がある。
- 防水効果としては弱い
撥水がなくなったら再処理しましょう。
もし、撥水がなくなったらテントやレインウェア、靴などそれぞれにあったメンテナンスキットを使用して定期的にメンテナンスを行いましょう。
今後は環境破壊を防ぐために、環境に配慮した撥水剤に切り替わっていき、これまでよりも撥水性の持続力は下がっていきますので、よりメンテナンスが大切になります。
ハイブリッドで最大の効果を発揮
ここまで紹介した防水と撥水は、もちろん別々でも効果を発揮しますが、組み合わせて使うことでお互いのデメリットを補いながら、お互いのメリットを活かすことができます。
例えば、テントで考えてみましょう。
防水に全振り
テントは雨の中張ること予想されるので、十分水の侵入を防ぐ対策が必要になる道具です。
単純に雨を防ぐ事に重点を置いて防水性を上げるために耐水圧が10,000mmの生地を使ったとしましょう。
これだと、防水性は非常に高く殆どの場合水の侵入を防ぐことができました!…と簡単な話ではありません。
防水性を高くしたため通気性がなくなってしまいました!!
これだと、雨が降っていないのに、結露とジメジメで快適性がなくなってしまいます。
撥水に全振り
では、今度は快適性を確保したいので通気性を活かして、撥水加工だけしてみましょう。
撥水加工は通気性を邪魔しないので快適です!
おっと、雨が降ってきたようです。雨を撥水効果で弾いていますね。
二日目。今日も雨。ん?あれれ、水がテントの中に染み出してきた!!
撥水効果は、恒久的に効果があるものではないので雨が降り続けることで撥水しなくなってしまったのです。
ハイブリッド
今度は2つを組み合わせてみましょう。
防水性は耐水圧1,200mmの少し低いものにして、通気性をある程度残します。
その代わりに、撥水加工を表にしておきます。
雨が降っていないときも通気性が確保されており、結露も少なく快適です。
おっと、雨が降ってきたようです。
でも安心してください。1,200mmの耐水圧ですが撥水効果で雨が弾かれるのでテントの中は快適です。
二日目。また雨です。撥水効果は少し下がって水がべったりついています。
でも安心してください。撥水効果は下がりましたが、防水加工がしてあるので水は入ってくることはありません!
このように、それぞれを単体で使うと発生するデメリットも、2つを組み合わせることで補い合う事で出来るのです。
これから、テントやレインウェアを購入する予定であれば、防水加工・撥水加工どちらもされているものを選びましょう。