WHY MSR SNOWSHOE ?

近年、冬山登山でMSRスノーシューを使用する機会が増えているという花谷さん。国内での普及率がまだまだ高いとは言えないスノーシューをなぜ選択するようになったのか? その理由を伺った。

「南アルプスの縦走なら、スノーシューの一択です」

── MSRスノーシューを冬山登山で使用するようなった経緯とは?

本格的に使い出したのは、七丈小屋を運営するようになってからなんで、この5年ほどです。それまではワカンとアイゼンを使っていたんですけど、前の管理人さんがスノーシューで黒戸尾根を登っていたので、騙されたと思って自分も使ってみたら、「アレ!? 全然使えるじゃん」と。必要ないだろうと思っていた標高の低い樹林帯でも、実は履いていた方がグリップして歩きやすかったんですよ。そこでそれまでの固定概念がなくなり、ほぼ脱ぐこともなく小屋まで登るようになったんです。── その固定概念とはどういったものですか?

自分が学生の頃、今から25年ほど前には安心して使用できるスノーシューの存在を見れなかったように思うので、冬山登山で使うイメージは無かったんですよ。実際に使ってみても、頼りないなというイメージでした。実はその後、知り合いから譲ってもらった初期のMSRスノーシュー「デナリEVOアッセント」を手にした時にその認識も多少変わったんですが、それでもワカンとアイゼンを使っていましたね。── 北岳バットレスへ同行した高柳さんも固定概念が覆ったと語っていましたね。

北岳への山行時、我々は序盤にチェーンスパイクを使っていたんです。南アルプス周りの里山では、本来、非常に有効なギアなんですけど、あの時は気温が高く、雪が湿っていたのでチェーンが雪の団子になってしまってグリップの効かない場面があって。それでスノーシューに履き替えてみたら、全然滑らないうえに、たまに雪が深くなってもそのまま歩ける。たまたまそういうコンディションの雪だったからですけど、スノーシューはその辺も関係なく使えるということに驚いていましたね。ラッセルのためだけじゃないんだと。── その感覚は、使用されているモデル「ライトニング アッセント」を選択するメリットと言えますか?

そうですね。ただ下りは難しいんですよ。構造的にテールが長いですから。でも、デメリットはそこだけかと思います。あとは浮力があるので潜らず、行動が早い。モナカでもカツカツでも、雪がどう変化していても全部行けちゃう。性能が進化したということなんでしょうね。── 昨シーズンにアップデートされたパラゴンバインディングと山靴との相性はいかがですか?

靴との一体感は素晴らしいです。以前の3ストラップモデルは、激しく使っていると前方向にズレることがあったんですけど、それが一切なくなった。トラバースでの不安要素も解消され、安心感は非常に高くなりましたね。それと着脱が早くなったのも大きな利点です。── 冬山登山では足回りのギアを着脱する回数が多く、背負って行動する場面もあると思います。それでもワカンより重量のあるスノーシューを選択するようになった。ということでしょうか?

クライミングが無ければですね。今回の北岳のように、スノーシューをデポしてクライミングできるシチュエーションなら別ですけど。行くフィールドによると思います。例えば、南アルプスの縦走なら、スノーシューの一択です。北アルプスの岩稜帯となると、おそらくスノーシューを担いでのクライミングになるので別の選択をすると思います。

花谷泰広(はなたに やすひろ) :
1976年兵庫県生まれ。幼少から六甲山で登山に親しむ。1996年にラトナチュリ峰(ネパール ・7035m)に初登頂。2012年にはキャシャール峰(ネパール・6770m)南ピラー初登攀で、ピオレドール賞を受賞。2015年より若手登山家養成プロジェクト「ヒマラヤキャンプ」を開始。2017年より甲斐駒ヶ岳黒戸尾根の七丈小屋の運営を開始するなど、国内外で幅広く活動中。(日本山岳ガイド協会認定・山岳ガイドステージII)
<www.hanatani.net> <www.kaikoma.info>

高柳 傑(たかやなぎ すぐる):
学生時代に登山、クライミングに目覚める。その後、社会人山岳会の横浜蝸牛山岳会に入会。アルパインクライミング、フリークライミングを中心に活動。様々な種類のクライミングを楽しむ。国内でのフリークライミングは小川山、瑞牆山へよく通う。クライミングの傍ら山岳写真家・青野恭典氏に師事、現在も活動中。宮城公博氏の著書『外道クライマー』に書かれた「タイのジャングル四六日間の沢登り」の相棒としても知られている。

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