衣食住をバックパックに詰め込んで、伏流水を汲み、展望を楽しみながら標高2 ,677 mの蝶ヶ岳へ。北アルプス屈指の展望地にテントを張り、槍穂の眺望を楽しんでいるのは、白馬村に住むバックカントリーガイド布施智基さん。「じつは蝶ヶ岳はじめてなんですよ」とコーヒーをすすり、ひとり時間を満喫。高所の暮らしを快適にするのは、世界中の登山家たちからフィードバックを得て開発、改良されたギアたち。
これらがあれば、国内外の山々を長く、安全に、快適に歩く自由を得られる。
今回は、布施さんに使用しているギアについて紹介をしてもらった。
この記事は、全国のアウトドアショップの店頭にて無料配布中の、アウトドアギアスタイルブック「BACKCOUNTRY RESEARCH 2021」の連動記事です。
目次
Toggle【プロフィール】
布施智基さん
ウィンターシーズンは白馬のカラースポーツでバックカントリーガイドを務め、夏は山や川で自然を遊び倒している。
海外トリップを繰り返し南米遠征ではバックカントリースノーボードとフィッシングをミックスして世界を楽しむ自由人。
MSRのアンバサダーとしても活躍!
【山行記録】
比較的晴れ間の多くなる秋の初め8月下旬にMSRのアンバサダーで白馬村のCOLOR SPORTSにてガイドをする布施智基さんと、北アルプス南部の大展望台として有名な蝶ヶ岳へ一泊二日で登りました。
両日ともに抜群の天気で、穂高連峰の大迫力な展望を満喫できました。
登ったルート
今回は安曇野市側から登る三股ルートを選択した。
三股ルートには鎖場や岩場など目立った難所はなく、初めて蝶ヶ岳に登る方におすすめしたいルートです。
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タイムテーブル
6:00 三股駐車場(標高1280m)を出発
6:20 トレイルショットを使い浄水し沢の水を汲む。
7:30 標高2000m付近 バランスを崩しやすい場面でもトレッキングポールで安全にあることができる。カーボン製のMSRダイナロックアッセントなら超軽量なので邪魔にならない。
10:00 順調に標高を稼ぎ稜線直下に到着。太陽光発電で充電できるLEDランタン、キャリー・ザ・サンをかばんにくくりつけ充電しながら登った。
10:10 蝶ヶ岳ヒュッテのテン場に到着。MSRハバNXで今日の寝床を確保する。テン場は極上の展望台だ。
蝶ヶ岳ヒュッテからの眺望。ジャンダルムや穂高、大キレットに槍ヶ岳と大パノラマが広がる。
【GEAR No.1】MSR ハバNX
山岳テントの理想は、軽い、コンパクト、耐風性、居住性、組み立てやすいことだと思っていますが、このハバNXは理想に近いテントだと思います。特に軽さを重視するテントになると、まず居住性が先に犠牲になりがちですが、ハバNXは居住性を捨ててません。この居住性の良さがMSRテントの魅力かなと思っています。
長期間のテント泊や雨の日は天井と前室が広いので圧迫感がなくストレスにならないんです。短いリッジポール1本が側面を垂直に立ち上げ、内部を快適にしているんですね。雨の日に前室でバーナーを使って調理できるのはありがたいです。
そして数年前から採用された、サイクロンポール。弾力性があり強風にあおられて押し潰されそうでも耐えます。アルミだったら曲がったと思うようなしなりも、このポールは風が弱まると、変形せず元に戻ってます。それを見るとサイクロンポールのすごさを実感しますね。
他に入れやすいコンプレッション付きの広口収納ケース、劣化しずらいコーティング、シームテープを無くす考えとか、長く使えるような改良が詰まっているテントですね。
【GEAR No.2】ネオエアーXライト レギュラー
つい最近までは自動膨張式のプロライトシリーズを使ってましたが、更に軽量化を考えてエアマットのXライトを使ってます。プロライトでも十分に軽く収納も小さいと思ってましたが、このマットを使い始めたら軽さも収納性もレベルが違い、もう戻ることはないと思います。心配だった耐久性も、問題ないし、暖かさはR値4.2とプロライトのR値2.4の2倍までありませんが、軽いのに高い断熱性がありますね。サーマキャプチャーというアルミシートの効果が効いているようです。そして厚みが6.4cmあり、北アルプスのようなテント場で石が多いところでも凸凹を吸収し、全く寝心地を損ねないのも気に入ってます。プロライトの安心感でないものと言えば、パンクしたときに内部はフォームが入っていないので、完全に潰れてしまうことです。プロライトであればフォームがクッションになり最低限のマットの役目を果たすからです。そこは軽さを優先にするか、トラブルでの安心感を取るか悩むところですが、フィールドでの応急処置と修理方法をできるようになっていれば問題ないことに自分はしました。どちらにせよプロライトでもネオエアーでも尖っているものに当たれば穴は開くので、使用には気をつけてます。
【GEAR No.3】エアヘッドライトピロー
テント泊ではなるべく荷物にしたくないので、衣類を丸めてたりして枕代わりにしてました。しかし夏場では余分に衣類があるわけではないので、枕にすることができないこともあり、山に持っていく枕を探していたところこの枕を見つけました。
58gと軽くて、手のひらに収まる収納サイズは全く苦になりません。ただ小さいだけでなく、エアー量で枕の高さを調整でき、形もレギュラーサイズならマミー型でも寝袋の中で使えるので、寝ているときにずれて頭から外れることがないので気に入ってます。
【GEAR No.4】ポケットロケット2
待ちに待ったMSRのガスバーナー!小さくて軽いので、冬のバックカントリーでもバックアップ用として持っていきます。小さいのに火力も強く、勢いのある燃焼音を聞きながら調理していると山で心強いです。五徳を折りたたむときのギミックな感じも好きです。1、2人用のクッカーぐらいがちょうど良いサイズ感ですね。
【GEAR No.5】トレイルライト1.3Lポット
山で使う食器やバーナーなど一緒にスタッキングできるサイズ感が丁度良く、蓋が透明なので何が入っているかわかるのがいいですね。蓋に湯切りの穴がありますが、お米も炊けます。炊いている経過がわかるので便利です。十分に美味しく炊けますが、穴を何かで塞げばもっと美味しく炊けると思います。
ハンドルを折りたたむと蓋をロックする役目になりばらけないので安心して持ち運べます。
【GEAR No.6】プラティ 2L ボトル
山で1番使う水筒です。水場が近くにあれば、タンクとして空にして持っていきますし、とにかく軽いので常にバックパックに入れてあります。使い方によりますが、何年も使える耐久性があり破損の不安もありません。ただ乾かさず放置しておくとカビが生えてしまうので使ったあとはなるべく早く乾かすようにしています。水に匂いが付きにくいので、山の帰りに美味しい湧き水汲んで自宅に持ち帰るボトルとしても使っています。周りを見渡すとテント場でもみんな使ってますね。山の水筒の大定番と言われるのも納得です。
【GEAR No.7】ハイペリオン 0℃
山では天気予報を裏切る夕立など突然の豪雨に襲われることが珍しくありません。そんなときにパック内のギアは防水サックなどに入れて水濡れから守っていますが、突然すぎて自分がずぶ濡れになることもあるので、寝袋には気を使います。この寝袋は撥水加工を施したダウンで水濡れに強く、早く乾きます。体が冷えた上に、寝袋を濡らしてしまったら、普通なら保温力が落ちますが、そこがこのモデルの強みです。
あと900フィルパワーの高品質のダウンを使用していることで、ダウン量260gでも0℃のスペックですし、収納サイズも信じられないほどコンパクト(14×15cm)になります。コンプレッションベルト付きのバックというのも便利ですね。背面にマットレスを固定できるストラップは斜めの多い山のテント場ではあると便利でした。
【GEAR No.8】トレイルショットマイクロフィルター
「山の水も安全なのか」と言われている今、浄水器を持つことが以前に比べ普通になっているような気がします。それはコンパクトに持ち運べ、簡単に使えるモデルがあるからだと思いますが、まさにこのトレイルショットは手軽です。片手で握るようにポンピングするだけで浄水できます。この手軽さから、ルート上に沢や池塘などあれば水を確保できますし、夏場にあてにしていた水場が枯れていることもあるので、水たまりや水場でない沢からでも水を確保できるわけです。もうこれは安全装備の1つになりますね。あと、渓流りに行くときも必ず持っていきます。
【GEAR No.9】プラティプリザーブ
ワイン用ですが、僕はワインの他にも焼酎を入れて持ち運びます。さすがに瓶を山に持っていくほど元気はないので、ソフトボトルに移せば軽いし、飲み干せば丸めて畳めてバックパック内のスペースを取らないことは重要です。スノーボード&フィッシングトリップで南米遠征に行ったときも現地のワインを入れて雪山へ持っていきました。トリップでは大事な装備の一つになりますね。
【GEAR No.10】キャリー・ザ・サン
このLEDランタンは歩きながら充電できるし86gと軽いので、テント泊では必ず持っていきます。太陽がなければ充電はできませんが、ある程度天気が読める長期のテント泊登山や釣りキャンプでは電池を気にせず使えるので便利だと思います。。強10時間、弱72時間点灯し、フル充電は約9時間ぐらいです。今のモデルは電池残量がわかるインジケーター付きなので残量を気にする不安がなくなりました。
【GEAR No.11】ビッグジップEVO
歩きながら小まめに給水すると、水を飲みすぎず、いちいち立ち止まることもないので自分のペースを崩さず登れます。このモデルになってから、ホースが太くなりバイトバルブも改良されたことで、少しの吸い込みで楽に水が飲めるようになりました。以前のモデルは登りで呼吸が少し上がっているときに飲もうとすると、軽く息が詰まったこともあったので、それを思い出すと格段に使いやすくなったと思います。広口で給水が早くて内部の洗浄がしやすい特徴は変わらずですが、ホースのジョイントが上部になったことにより、リザーバーの出し入れが楽になりました。匂いが付きずらい素材で美味しく水が飲めるのは、しんどくても楽しい山登りではうれしいことです。
【GEAR No.12】ライトシート
自動膨張式のマットを小さくした座布団で、空気を抜けば小さくなり、軽く持ち運びも苦になりません。山でぼーっと景色を眺めてるときは、おしりも痛くならず、ずーっと座っていられます。雪の上なら、断熱性が高いので冷たくなりませんね。あと、スモールサイズのマットを使うときは足元に敷いてマットを拡張させるような使い方もしています。
【GEAR No.13】ファイヤービナー
マルチツール的なギアですが、バーナー点火用のライターの代わりとして重宝しています。
ライターと違ってガス切れは起こさないですし、軽く水に濡れたぐらいでは壊れるわけもないので安心です。交換用の替え芯も予備で付属していますし、別売もあるようなので長く愛用できますね。常にバーナーとセットで装備に入れています。
着火機能の他にもラインカッターやマイナスドライバー、ボトルオープナーなどカラビナにさりげなく備わっています。カラビナ式なので、どこでも引っかけられるのも気に入ってます。
【GEAR No.14】ブロッカーライトコンプレッションドライサック
テント泊装備で嵩張るものと言えば寝袋と防寒着などですよね。それを小さくまとめられればバックパックの中のスペースを節約できるので、このコンプレッションサックに寝袋は入れ替えて使ってます。ついでに防寒着のダウンや替えのソックスなども一緒に入れて小さくしてます。このサックは余分な空気を抜けるバルブがあって、なしのモデルに比べ更に小さくコンプレッションすることができます。更に防水仕様で作られているので、濡らしたくない衣類などを入れていても安心なんですよね。またブロッカーという商品名のように形は四角い形状で、デッドスペースを作らずパッキングできます。サイズ選びは寝袋+防寒着など入れることを考え、余裕をみて10Lを選びました。
【GEAR No.15】オーラルピースアウトドアアドベンチャー
眠気に負けて歯磨きを忘れて寝てしまうことがあっても、歯磨きがしたくて、歯を磨かないのでは気分が違うんですよね。山では自然のことを考えると、普通の歯磨き粉は使いたくないので、ブラッシングだけで済ませていたこともありました。このアウトドアアドベンチャーはその悩みを解決してくれました。からだにも自然にもやさしいというのは、飲み込んでもOK。天然由来成分で作られているため、磨いた後に自然に吐き出しても、ダメージをあたえないなど、アウトドアで遊ぶ自分に合っていることがわかりました。飲み込んでOKというのは、つまり水が無くても磨けるということにもなります。水が貴重な山ではマジですか?ってことです。あと歯磨き粉を口に含むだけでも、虫歯予防になるので、夜遅く面倒なときはブラッシングなしで、口に含んでそのまま飲み込んで終わりにします。強めのミント味なので歯磨き感もあり、それだけでもスッキリしますよ。こんな用途で使えるので、もちろん車中泊でも重宝しています。
そしてJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)・NASA(アメリカ航空宇宙局)が推進する国際宇宙ステーション(ISS)への搭載候補品として選定(内定)されたと聞いて、製品の信頼性は間違いなく保証付きです。
【GEAR No.16】ドロムライトバッグ
バックカントリースノーボードや釣りで、ハードな遊びになりそうなときは、耐久性があるドロムライトを使ってます。水場が少ないときは最低これくらいの容量が必要だし、畳めば手のひらサイズというのも、どこへでも持っていけるポイントです。
口が3段階で、キャップを外して広口で水汲みができ、あと2段階で小さく注げ調理するときもコントロールしやすいので場面に合わせて使えますね。