モチヅキスタッフのニコルです!
前回はC2へ荷揚げをしましたが、今回は更にその上のC3(キャンプ3)へ標高をあげます。
今回は、キャンプ1からキャンプ3は徐々に本格的な上りへ変わっていきます。
C3はカヒルトナ氷河の源頭部。
それでは、源頭部めざして氷河沢登り行きましょう!

ルート概要

C1(2400m)からC3(3400m)へは、標高差1000m。
C2は通称デポキャンプで、現在はほとんど使われていないキャンプだ。
C2までは、比較的ゆるいスキー場のような「スキーヒル」という大斜面を登る。
C2-C3は「モーターサイクルヒル」と呼ばれ少し急な登りになる。

※マップの青いマークをクリックするとキャンプ名を見ることが出来ます。

3日目

この日はC1からC3へ登る。
標高差1000mを荷物約50kgを担ぎ、引っ張り登ることになる。
特にC2以後は直線距離が短い500mの上りでまさに心臓破りの坂。名前はモーターサイクルヒルだ。

時刻は朝7時、テントをたたみ空のバックパックに荷物を積み込む。
登り用の荷揚げと、帰りのデポは済んでいるのでクリーン缶(携帯トイレ)をソリに積むだけで荷造りは終わりだ。

すでに15人くらいのチームがスキーヒルの中腹を登っているのが見えた。

目指すC3は3400mだが、低緯度換算で恐らく富士山程度の酸素量になるだろうと予想される。
低酸素で自分の体がどのような反応を起こすかわからないので、慎重に登らなければならない。

シール(滑り止め)を付けたスキーを履いて、まずはC3を目指し出発する。
今日はC3に行くだけなので、焦る必要は一切ない。
おまけに白夜なので、時間はたっぷりあるのでゆっくりと登ることにした。
今後、4000mを超えた低酸素帯では脈拍を上げたり、興奮すると低酸素障害になる可能性があるので、息が上がらないペースで乱さず一歩一歩登っていく事が必要になる。
C3までの登りは、この予行練習を兼ねることにした。
体調もよく、体力も十分だとすぐにペースが上がってしまう。
運動をしている人ならわかると思うが、少し息が上がるくらいが気持ちのいいペースなので、気がついたら気持ちのいいペースになっている。
ペースが上がり過ぎたら、意識して、脳内でカウントをしながらペースを落とし登る。

『1,2,3,4…』

そんなふうに、自分のペース作りに集中しているうちに、気づいたらC2に付いていた。
写真を撮るのを忘れるほどに集中していたため、景色もほとんど見ていなかった。

自分の荷物が埋まっているのは、C2よりも少し上のモーターサイクルヒルの入り口だ。
昨日はガスが出ていたので気づかなかったが、周りにはスノーブロックで作られたテントサイトの跡がいくつか残っていた。
中には、暇だったのだろう…城のようなとてつもなく立派で高いテントサイトがあった。
僕は、こういう一見無駄なものが大好きなので、ふらっとお邪魔させてもらった。
中は小さな窓や、トイレブースまで完備されている豪華なテントサイトだった。
来るときにセスナで一緒だったチームは、C4まで行って帰ってくるツアーだと聞いた。
このテントサイトも、そういったツアーでイベント的に作るのかもしれない。
余談だが、C4までで帰ってくるって実は最高にゴージャスで素敵だと思う。僕も、次回またデナリに行くなら敢えてそういうピークハントではないスタイルで行って、食事に妥協せず、デナリを満喫したいと心から思う。ただし、C4までも決して楽ではないが。

昨日のデポポイントにつくと、目印の自分の名前が書かれたシールが付いている竹棒を探し荷物を掘り出す。
掘り出したダッフルバッグをそのままソリに乗せて固定するだけなので数分で終了だ。

この場所の名前はカヒルトナパス。
パスは日本語で峠。
その名の通り氷河の峠で、反対側はピーターズ氷河になっている。

ここでだいたい2900m。日本の山だと八ヶ岳の赤岳くらいだ。赤岳に比べて酸素が薄いかどうかは正直わからない。
景色はどこまでも延々と続く北アルプスという感じの景色だ。
多分、どれを登っても北アルプス級の山で、どれを登っても手応えがある山行になるだろう。
さすがに未踏峰も多い筈だが、たとえ自分の名前をつけたところで、山座同定は難しいだろう。

少しだけ休憩し、再出発する。
モーターサイクルヒルを見上げると、15人くらいのチームが降りてきた。
クレバス対策のアンザイレンをして歩いてくる。
恐らく朝に見えた隊だ。
早くない!?
もう、デポして帰ってきたのかと感心する。
どうやら、アメリカ人の隊らしいが、彼らには高度順化など必要は無いのではないかというスーパースピードだ。

道を譲って通り過ぎるのを待つ。
みんな口々に、Hi!とかHow you doin’?とか挨拶をしてくる。
一人ひとりに、Hi!とかGood!とか言って返していく。
そして、最後のガイドっぽい人が、ハズゴーイン?と言いながら近づいてきた。
中学生義務教育レベルの英語力な僕は、I’m going to C3.と返答した。
その時のガイドの苦笑いは今でも覚えている。

この後、C4で多くの人にハズゴーインと言われ、これがHow you doin’?的な意味のHow’s it going?だと気づいたときにはC4の中心で叫びたくなった。

「調子はどうだい?」「C3に行く予定だ!」

ヤバイやつだ。
この時、本気で日本の英語教育は間違っていると言っている人の真意を理解することができた。
アメリカには2ヶ月ほどいたが、How are you?と挨拶されたことはついになかった。
なぜ、一般的につかう口語表現を教えてくれなかったのか…
いや、すみません。多分おしえられても勉強してなかった思います。すみません。

とりあえず、このときは何もわかってなかったので、英語で返してやったぜ!と、得意げになりながら登り始めた。
カヒルトナパスからは徐々に傾斜が上がっていく。
スキーで滑ったら楽しい斜面だ。

スキーで色々と遊べそうな斜面を見ながら、再度リズムを意識しながら登る。
晴れているので、雪の照り返しがきつく、顔がどんどん焼けていくのがわかる。

少し登ったところで、カヒルトナパスへ振り返る。
写真では見えないがカヒルトナパスからカヒルトナドームへとトレースが続いている。
誰かが、カヒルトナドームへ登ったのだろう。
カヒルトナドームからはデナリが展望できるのだろうか。

上空には、怪しいレンズ雲っぽい雲が出ている。

ここから、C3はあっという間で、C2までと違い、登っている感が楽しく充実した登りが楽しめた。
C3にはすでに多くのキャンプが作られており、みんな既にくつろいでいた。
恐らく、上部が天気が悪いらしくここで停滞しているチームも多いのかもしれない。

またもや、ヤドカリ戦法で、空き地のテン場を拝借しテントを設営する。
この後、スノーブロックで防風壁を補強する。

というのも、奥のカヒルトナドームの上に、レンズ雲が成長しており、これから天候悪化が予想されるからだ。
ここは当然ながらスマホの電波は圏外。GPS電話や無線を持っていれば天気予報を受信出来るが、お金のない僕は気圧計や目視で判断するしか無い。
レンズ雲はものすごくわかりやすい悪天の前兆だ。

上空は、まだ晴れている。

4日目、5日目

天気は予想通りに悪化の一途をたどった。
三日目の夜から荒れ始め、テントが埋まらないように夜に1時間おきに除雪を行った。(夜と言っても明るいが)
4日目は、ひたすら除雪をし続け暇なので、帽子が風で飛ばないように顎紐を付けたりして過ごした。

4日目の夕方ごろには積雪は終わったが、ガスと風は相変わらずだ。
5日目も相変わらず、ガスと風が続く。

散歩をしたり、スキーで滑ったりして時間をつぶす。

暇すぎて快適なトイレブースを作ったが、物音がすると思ったら知らないオッサンが勝手にブースを使っていた!笑

一日中、スッキリとしない天気が続いたが、夕方には雲が薄くなってきた。
気圧計もぐんぐんと上がってきているので明日は登れそうだ。

フォーレイカー方面を眺めると景色がとても幻想的だった。
他の登山者もテントから出て景色を楽しんでいた。

ただ、自分たちが気分が上がってハッピーだからと言って、全員がそういうわけでもない。
飛行機で一緒だったおじさんもC3まで来ていたが、高度障害で頭が痛いらしく一度C2まで降りるらしい。
そして、C4やC5で天候待ちをしていた人たちも時間が有限ではない。
タイムアップで止む無く下山してきた日本隊にもあった。
挨拶をしたが、とても楽しく話しかけられる雰囲気ではなかった。
デナリの登頂率は5割弱、二人に1人は止む無く帰らないといけなくなる。
そのことを改めて実感する出来事だった。

気圧計の動きを見ると明日は行動ができそうだ。
早めに寝て、6日目に備えることにした。

次回はC3からメディカルキャンプ(C4)への移動します!

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By ニコル

台湾をこよなく愛するアウトドアマン。
最近は台湾寺の撮影に狂っているが、円安地獄で台湾に行けずくすぶっている。