メンテナンスを怠らず一生モノにする
タフな環境を想定して作られているアウトドアギアもメンテナンスをしないとそのパフォーマンスが発揮されない。とくに刃物は放置するとすぐに錆びて、切れ味が悪くなってしまう。それを経年変化で“アジが出た”などと勘違いして使い続けることだけは避けたいところ。経年変化を楽しめる素材は、木材やレザー、銅などに限られている。
とはいえ、実際は道具を大切に扱っておらず、あるとき父親に気づかされた。それまでは、どこか新品の鉈を使うのは照れ臭く、早く使い込んだ感じにしたく、わざと錆びだらけにし、ひたすら薪を意気揚々と割りまくっていた。それを見かねた父親が
「なんだ、その錆は! ちゃんと錆を落として、研がないと格好悪い。道具は使ったら、使う前の状態に戻すのが基本だ」
と一蹴されてしまった。確かに倉庫に置かれている野良道具たちは、持ち手は汚れていても刃の部分はいつもキレイに整っている。また新たに買いなおした道具を見たことがなく、どれも長く愛用している。本当の“アジ”がある道具になっている。思い起こせば、砥石で磨き、錆びないように、いつもキレイに汚れを拭き取っていた。
それを見習いたいと思うものの、レンガほどの砥石を持ち歩くことは困難で、思い立ったときにメンテナンスをしたいものだ。と、モヤモヤしていた矢先にTEPPAから好都合な「さびとり侍」と「ハンディストーン 鉈用」が発売された。どちらもコンパクトなので、焚き火道具と一緒に持ち歩いている。錆取りは消しゴムの要領でピンポイントに錆を落としてくれ、砥石も割りばしほどのサイズなので片手でサッと水をかければ、刃先に押し当てるだけで簡単に研げる。自由な時間があるキャンプでは、その場でメンテナンスができるので、設営が終わった段階で焚き火を見ながら作業をするようになり、もはやルーティン化している。この作業は、次回のキャンプで万全のパフォーマンスをしてもらうためで今日のためではなく、いざというときに切れ味が悪いことほどイライラすることはないので明日のために行っている。
道具は使い手によって、寿命が変わってくる。ちょっとでも壊れたり、使いづらくなると買いなおしてしまいがちだが、買うという選択肢のまえに、こういう便利なアイテムを使い大事に扱うことで一生モノになってくれる。