植えて、育てて、イチからつくる。だから「イチカラ畑」
文・寺倉 力 写真・山本 智
「トレイルそば」の生みの親に迫る
即席麺でありながら、生麺のようにもっちりとした食感と、そば本来の豊かな香りと味わいを併せ持つ「トレイルそば」。アウトドアで手軽に食べられるという利便性だけでなく、純粋に「おいしい」こと自体が、大きな魅力である。
このユニークな製品を生み出したのは、新潟県小千谷市郊外でそばの栽培から加工、各種製品づくりまでを手がける、株式会社イチカラ畑の代表・吉田勇童さんだ。
吉田さんは、北海道を拠点にプロスノーボーダーとして活動している最中に新潟県中越地震が起こり、震災復興のために地元・新潟に戻った。帰郷後、地震後に閉鎖された牧場を再利用してくれる人を探していると耳にする。それが、そば作りに携わるようになるきっかけだった。
もともと自然のなかでの仕事や、食の安全性にも関心を抱いていた吉田さんにとって、農業に目が向くのは自然な流れだった。とはいえ、周辺一帯は魚沼コシヒカリという超有名ブランド米の一大産地。未経験者が新規就農する余地はほぼなかった。
その点、やせた土地でも育ちやすいそばは、放棄されていた牧場の再利用にうってつけ。地震で壊れかけたトラクターをタダ同然で譲り受け、荒れ果てた土地をコツコツと耕すところから始まった。
「地元は『へぎそば』で有名な土地だったので、そばを栽培すれば買ってくれるだろうと、わりと安易に考えていたんですが、そんなに甘くはなかったですね(笑)」
と吉田さん。農業経験がまったくない状態から始まったそば栽培は、しかし“未経験”ゆえに、ほかとは一線を画す独自性を次々と形にしていくことになる。
ひとつは、農薬や化学肥料を使用しない完全有機栽培であること。これは長年スノーボーダーとして活動してきた吉田さんにとって、譲れないポイントだった。地球にも人間にもよい農業がしたい。それは自然環境に敬意を抱きながら遊ばせてもらっている者としての、務めだと考えたのだ。
次に、そばの栽培にとどまらず、収穫後の加工や製品化まで自ら手がけたこと。当初は、農業のノウハウをまったく持たないで有機栽培に乗り出したこともあり、一般的な農家の半分程度の量しか収穫できなかった。これでは生活が成り立たない。そんな危機感から、早い段階から「製品づくり」にも踏み込むことになる。そして持ち前の探究心と執着心を発揮し、たどり着いたのは、効率よりも品質を優先する乾麺づくりだった。たとえば、一般的な乾麺メーカーで石臼製粉しているところは皆無に近い。生産効率があまりに悪いためだ。
以来15年にわたり、そばを植え、育て、製品として届けるという仕事を続けてきた。「トレイルそば」は、そのなかで生まれた個性的な製品であり、「山で本当においしいそばを食べたい」という吉田さん自身の実体験が色濃く反映されたものだ。
トレイルそば
生麺のような風味と食感
袋に直接湯を注ぎ、4分待つだけで、アツアツの本格的そばが楽しめる。アウトドア用ドライフーズを見回しても、ありそうでなかったこの即席そばは、冷凍と冷風乾燥を用いたノンフライ製法により、そば粉を高配合した本来の香り豊かな味わいと、生麺のようなもっちりとした食感を楽しめる。小千谷の農園にて完全無農薬で育てられ、丹念に石臼で挽いた全粒粉を使用。油で揚げていないぶんカロリーも控えめ。
内容量:68g
価格:¥756









